wake up call
「・・・ん・・・?」
望美は、良い匂いで目をさました。
そのとたん、お腹が鳴る。
そう言えば。
昨夜は、疲れ果てて夕飯を食べる前に眠り込んでしまったのだ。
「・・・お腹、すいたな・・・」
ぽつりと呟けば、空腹はひどくなるばかり。
望美は、布団を抜け出して厨へ向かった。
そっと覗けば。
そこには、思い描いた後ろ姿が。
早朝だというのに、きっちり着替えて朝食の支度をする、広い背中。
以前よりも格段に逞しくなったというのに。
台所にたつ姿は変わらない。
それを見るだけで、彼女の心がほんわかと暖かくなった。
このまま、その姿を見ていたいような、そんな気分。
しかし。
ぐー・・・・。
そんな望美の気持ちなどお構いナシに、体は空腹を訴えた。
恥ずかしさに顔が赤くなる。
更に。
その盛大な音が聞こえたのか。
鍋に向かっていた体が、反転したのだ。
「ああ、おはようございます、先輩」
「・・・おはよう・・・譲くん・・・。今の、聞こえた?」
バツが悪そうに聞くと、譲は肯定とも否定とも取れる笑顔を浮かべる。
「・・・先輩、何て格好してるんです。寝巻きじゃないですか」
「・・・だって。お腹すいたんだもん。台所にいるの、譲くんだってわかってるし、いっかなーって・・・」
ぺろっと舌を出す望美に、譲は。
呆れ顔を保とうとするのに、必死だった。
自分ならば、その姿を見せてもいい。
そう言われたようで、嬉しさを隠しきれなかったのだ。
「・・・仕方のない人だな。待っててください、すぐにおにぎり作りますから。それ食べたら、きちんと着替えてきて下さいね?」
「はぁ〜い♪」
顔が赤くなるのを見られまいと、譲は身を翻し釜へ向かう。
しかし。
その耳が赤くなっているのを。
望美は、見逃さなかった。